豊崎愛生3rdコンサートツアー The key to Lovin'のこと その2

舞台を移して、6月11日、愛知県芸術劇場での公演からは、オーソドックスなステージでのライブです。 窓の形をしたスクリーンが設置されていたり、ランプを模したオブジェがバンドメンバーの上からつりさげられていたり、舞浜とはまた異なった趣のステージになっていました。 それぞれの曲のこととか、ツアーのなかで感じたことなど、思いつくままに書いていきます。



タワーライト

東京タワーをモチーフにした曲を!との豊崎さんの願いをうけて作られた曲。大阪に住みながら、東京まで仕事に通っていたころ、帰りの新幹線の窓から眺める東京タワーが励みになっていたそうで、豊崎さんに言わせると、東京タワーは“夢を追いかけて未来に進むためのキーワードになるモチーフ”だとのこと。

アコースティックギターアルペジオと、バスドラムを踏み込む音が心地よく響くこの曲。ライブで豊崎さんが歌うところを見るたび、より一層この曲を好きになっていくのを感じました。そしてなにより、ラッタッタのステップがかわいい。スフィアのライブの場合、豊崎さんもかっこいいダンスやかわいい振り付けでファンを楽しませてくれますが、豊崎さんソロのライブでは、振り付けといったものはほとんどありません。ステージ上での豊崎さんは、音楽にのせてリズムをとったり、客席に手を振ったり。ただ、その彼女の一挙手一投足がどれも愛らしい。タワーライトのラッタッタにかぎらず、この曲のあそこが可愛かった、なんていう部分が他にも数多くありました。

ポートレイト

自分の弱さだったり、嫌いな部分だったり、そういったものから目を背けずに、それらも含めて今の自分だと受け止める、そんな曲です。過去の自分に届くように、声を絞り出すようにして歌う豊崎さんがとても印象的でした。

今一度過去の自分を振り返り、昔の自分と向き合って優しく歌いかけることができればいいなぁ、というところから生まれたのが“ポートレイト”という曲です。
(引用元:ローソンHMV 豊崎愛生『ポートレイト』発売記念インタビュー 2014年11月11日

“all time Lovin'”には、「これまでの豊崎愛生を詰め込んだ宝物のようなアルバム」というのがテーマとしてありますが、それはもちろん個性豊かで多彩な楽曲をという意味でもあり、同時に豊崎さんの内面的な部分も凝縮されたアルバムという言い方もできるのかなと思います。

トマト

この曲は言ってしまえばラブソングで、ひとりの女性が愛する男性へ想いを伝える歌です。しかし、いかんせん恋愛経験の乏しい僕には、そういった内容だと感情移入がしづらいものです。そういうときの対処法として、僕がよくする方法があって。歌詞のなかの一人称と二人称を、「豊崎さん」と「ファン」におきかえて都合よく解釈することで、なかなか聴こえ方が変わってきます。

豊崎愛生をつくっているのはほかでもない“あなた”です」
こういった話をアルバムのリリースイベントでされていたそうです。こう言ってくれるのは嬉しくもあり、驚きでもあり。ひとりひとりの日常に寄り添うように、自分の弱い部分に手を差し伸べてくれるのが豊崎さんの音楽です。ファンの立場から言えば「いまの自分をつくっているのは豊崎さん」と言ってしまうのも、決して大げさな表現ではありません。リップサービスとはいえ、自分が豊崎さんに抱いているような気持ちと同じような想いを、こうして発信してくれること自体、ファン冥利に尽きるというものです。自分をつくっているのはひとりひとりのファンだと明言し、“かっこ悪いわたしも見てて”と歌う。そんな彼女の人柄にますます惚れてしまう一曲です。

君にありがとう

徳島公演の会場限定曲として歌ってくれました。もうひとつの限定曲“love your life”もですが、彼女のパーソナルな部分に焦点をあてたもので、地元徳島で満を持しての披露です。僕は“君にありがとう”をこれまで生で聴いたことがなく、また徳島遠征も初めてだったため、やっと聴けた…という思いでした。“君にありがとう”は豊崎さんの実家で飼っていた柴犬のリュウちゃんにあてた歌です。僕も数年前に実家で飼っていた犬を亡くしていて、同じ経験のある方はわかると思うのですが、その当時は本当にこの曲を聴くのがしんどかった。

で、しばらくたって、ようやくまともに聴けるようにはなったのですが、やっぱり豊崎さんが声を震わせながらこの曲を歌っているところを見ると、涙が止まりませんでした。うちの子も空で見守ってくれているのかな、とか。もっと優しくしてあげればよかったな、とか。ほんとうにおそろしい曲。ライブで聴くのはたまにでいいかな、と思ってしまうくらい。

おさんぽの唄

今回のツアーを象徴する曲。このときだけそれまでとは違う楽器をそれぞれが持って、よだれむし楽団として演奏していました。終始にこやかに進行するパートなのですが、籠島さんの仕事量が群を抜いていて、それどころではなかったように見えました。いつも素敵な演奏、ありがとうございます。

セットリストのなかで、ひとつめの会場限定曲の直後に置かれているのですが、これにはセットリストの妙を感じました。地元徳島とファイナル中野、その公演の会場限定曲は“君にありがとう”と“シロツメクサ”でした。どちらもツアーのなかで鍵になる会場で、そこでだけ歌われる曲というのは必然的にその1曲自体の持つパワーも大きいものになります。期待を裏切らず、その2曲が歌われたあとの会場の空気は一変し、言葉は悪いですが、重苦しいような、しめっぽいような、雰囲気になってしまいます。御多分に漏れず、僕の目頭も熱くなっていました。

そんな空気を再び「おさんぽ」の空気に引き戻す力をこの曲は持っていました。おそらくここにこの曲がなかったら、その前の曲を引きずって、素直に楽しめない曲ができてしまっていたと思います。初めは、かわいい曲だなあ、というくらいの感想しかもっていなかったのですが、これほどライブで映える曲だとは。


もう一回くらいつづきます。